コロナが終息しつつある今、円安等一時的な影響があるものの、最も多くの技能実習生を送り出していたベトナムにおいて技能実習生の集まりが芳しくないことから、ベトナム以外からの技能実習受け入れを進める監理団体が増えています。

中でもインドネシアの注目が集まっており、以前から名が通っていた送出機関によってはキャパオーバーのため新規取引を制限されているとの声すら聞くようになりました。

【インドネシア人の日本語学習】

インドネシアにおける日本語学習熱は高く、中国に次いで世界第2位の70万人が日本語を学習しています。日本語学習者が多い理由としては、1980年代以降、インドネシアの高校における日本語教育が盛んになったことから、今でもインドネシアの高校では第二言語や選択科目の一つとして日本語を取り入れている学校が多くあります。

【インドネシア側組織説明】

①SO(送り出し機関)

SOとはSending Organizationの略でインドネシア労働省の所轄(認可)となります。認可の条件として、LPKの認可をもつYayasan(公益法人)またはPT(株式会社)であること、および、送り出し相手先国組織とのMOU(Memorandum of Understanding)締結が必要です。
表向きはこの二つですが、インドネシアでは「(教育期間中に滞在するための)寮」の設置も求められます。

②LPK(職業訓練機関)

Lembaga(機関) Pelatihan(トレーニング)Kerja(労働)の略です。LPKを設立する際の認可は労働省と文部省の2ラインがあり、どの省の認可かは、認可番号で判断できます。国内での需要に基づいて自動車整備などの本来の訓練もありますが、海外に労働者を送ることを目的として韓国語や英語、日本語教育を行う機関もあります。

上記のとおり、LPKは条件が整えばSOになることが可能です。

【イスラム教について】

これまで中国やベトナムからのみ技能実習生を受け入れておられた監理団体/実習実施者とされましては、イスラム教とはどのような宗教なのか気にされる方もいらっしゃるかもしれません。簡単にイスラム教徒の習慣についてご説明いたします。

<礼拝>

 イスラム教徒は一日5回の礼拝を欠かしません。最初は朝4時半から6時までの日の出の頃、続いてお昼12時ごろ、3回目は午後3時すぎ、4回目は日の入りの18時ごろ、最後は就寝前です。1回の礼拝はおよそ5分程度です。インドネシアには各地にモスクがありますが、お祈りの場所はモスクでなくでも可能です。
日本で働くイスラム教徒は、一回目は職場に行く前に、二回目はちょうど昼の12時~13時の間(昼休み中)、三回目は15時~16時半のあいだ(10分程度の休憩を利用して)、四回目は18時~19時の間(帰る時間)、最後には19時~夜中までだから余裕がありますので、業務に支障なく、お祈りをすることができます。ただ礼拝の前には、手や、顔、足など洗浄し清潔にしますので、洗面所など水が使える施設が必要です。但し、例外的に水が無い状況で礼拝を行う方法や、数回分をまとめて礼拝することも可能で、個人差や状況に応じて柔軟に対応しています。ただ礼拝は毎日のことですから、実習実施場所で使っていない部屋(静かな、人に邪魔されない場所)を準備して頂く等のご配慮頂けますと幸いです。

<断食とハラルの食事>

イスラム教では“断食”の期間が年に一度あり、ほぼ30日間飲食をしません。ただ、1日中飲食しない訳ではなく、あくまでも日の出から日没までの間にしないだけですので、 日没から日の出の間は飲食が可能です。断食している時間帯は食べ物やタバコはもとより、水分も唾を喉に通すことさえ禁止されています。また普段の食生活では豚肉および豚加工品は決して口にすることはありません。またアルコールは理性を奪い正しい判断ができなくなる可能性があるので良くない習慣として禁止されています。

これらのルールはイスラム教徒にのみに求められるものであり、他の宗教の人に対して強要することはありませんし、他人が豚を食べることを嫌悪するものではありません。日本人の方が自分たちの生活習慣をあえて変える必要はありませが、彼らの戒律で禁止されているものをあえて強要したり、しつこく誘ったりすることは許されません。

<ヒジャブ>

イスラム教徒の女性には羞恥心があって、髪の毛や体の形をできるだけ人に見られたくないことから、女性は髪の毛を隠す“ヒジャブ”を被ります。同じインドネシア人のイスラム教徒でもヒジャブを被る方も被らない方もいます。こちらも食事同様に本人の意思に反して無理やりヒジャブを取らせるような行為は避けてください。

【インドネシア送出機関との協定】

ベトナム等とは異なり、監理団体と送出機関は協定書(覚書)に双方が捺印するだけでは完了となりません。
下記必要手順を記載します。

  • PDF/WORDで作成されたドラフト版のMOUをインドネシア大使館(または総領事館)にチェックしてもらう
  • 公証役場に持ち込み二部公証してもらう(一部監理団体/一部送出機関保管)
  • 公証人所属法務局による公証印押印証明取得
  • 外務省によるアポスティーユ(証明)を取得

※東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府ではワンストップサービスがあり、公証役場にて外務省アポスティーユまでの手続き(上記②~④)を一括で行えます。
※埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、長野県、新潟県の公証役場では、公証人の認証と法務局長による公証人押印証明(上記②・③)を一度に取得できます。

【協定書について】

  • 日本語/インドネシア語で作成され、一冊つづりにしてください。 (日本語/英語版は認められません)
  • 協定書記載の講習手当は1名あたり月額60,000円以上(食費含む)にしてください。
  • 協定書記載の送出し管理費は1名あたり5,000円/月以上としてください。 毎月送金が基本となります(送金手数料は監理団体負担)。
  • 大使館の正式名称は「駐日インドネシア共和国大使館」に統一してください。また、「インドネシア」「インドネシア国」は「インドネシア共和国」に統一してください。

【特定技能について】

インドネシアから特定技能を送り出すにあたり、送出機関は必ずしも必須ではありません。
制度上では、労働市場情報システム(IPKOL)および海外労働者管理サービス(SISKOTKLN)への登録が必要とされていますが、IPKOLは2023年1月時点では稼働していないように聞いているため、現状SISKOTKLNのみの登録となっています。
採用予定のインドネシア人本人がSISKOTKLNへの登録およびVISA申請が単独で困難な場合、現地送出機関に依頼することも可能です。ただし、特定技能外国人の支援が実施できるのは、技能実習のSOライセンスではなく、PJTKEライセンスを有する機関となります(実際には名義借りが横行しており、従来のSOが支援している実もあるようです)。

日本で技能実習を満了した方を資格変更で特定技能にする場合もSISKOTKLNへの登録後に発行される移住労働者証(E-KTKLN)をもって、在日インドネシア大使館に海外労働者登録手続きを行うことで登録手続済証明(推薦状)が発行されます。