特定技能就労を希望する外国人の方が定まった場合、採用内定を出す前に、様々な確認と合意が必要です。

・手取り額(額面からの控除項目や控除額など)の合意、確認
・業務内容の確認、合意
・就労形態(日勤、深夜、シフト制、就労時間など)の合意、確認
・休暇(時に一時帰国)の確認、合意
・雇用契約の更新条件の確認、合意
・住まい、通勤などの確認、合意
・各種支援内容の確認、合意

などなど

例示して列記した代表的な内容について、少し深掘りしてみます。

手取り額(額面からの控除項目や控除額など)の合意、確認

日本人も同じですが、外国人も実際にいくらもらえるのかは、最大の懸念事項です。

・会社独自の控除項目とその控除額について
 法的控除はともかく、会社によって独自で控除している項目がある場合は、特にその控除内容をしっかり説明し、理解と承諾を確認しておきましょう。

・家賃、電気、ガス、水道、インターネット代など
 この点も一人住まいの場合はともかく、実費を複数人で案分する場合や、一人増えた…一人減った…などの場合もありますので、配慮し、控除する費用を確定、確認、合意を取り付けましょう。

・住民税
 特定技能就労が始まった後で、「住民税」がいつの間にか控除発生するタイミングで、トラブルになる場合が多くあります。事前に説明しておいても、当の本人は覚えていず、その時に騒ぎ出す場合も少なくありません。

※年金の脱退一時金などについて
 技能実習生から、留学生から、年金を支払い続けている場合、脱退一時金の請求は過去5年間までしか遡れませんので、目先のお金に執着の強い外国人の多くは、雇用契約終了か一時帰国の希望を申し出てくる場合があります。この辺りまで最初に合意を取り付けておくと、双方にとって安心で、忘れた頃にこの合意に立ち返ることができます。

業務内容の確認、合意

「こんなに大変だとは思わなかった…自分にはとても務まらない…辞めます」

従事する業務内容をきちんと事前に正確に理解していないと、苦労して配属までした後で、数日、数カ月で退職となるケースもあります。

守秘義務的に配慮すべき部分もあるやもしれませんが、可能な限り、動画や画像などを活用し、丁寧に説明し、理解と納得と一定以上の覚悟を求めることも必要です。(身体介護の匂いや、建設現場での暑さや寒さだったり、業務内容に応じて重い荷物を上げ下げする、冷凍庫内での作業があるなど、実体験してみないとわからない場合は特に、可能な限り工夫を凝らした説明や確認が大切です)

また、従事させたい業務内容が複数に渡る場合は、基本的に雇用契約に記載のない業務への従事指示は違法となりますので、全て雇用条件書内に列記しておき、こういうケースもあることを承諾しておきましょう。

就労形態(日勤、深夜、シフト制、就労時間など)の合意、確認

出稼ぎ外国人の多くは、残業が多くあったり、深夜時間帯のシフトに入れると割増賃金が稼げると、安易に希望する方ばかりですが、本人の健康の問題であったり、Aさんには残業があって、Bさんには残業がない場合(深夜シフトも同様)など、様々な点で子供の用に不平不満が出てくることも良くあります。気持ちの問題はなかなか難しいですが、せめてそういった差異が生まれる場合があるケースなどでは、事前に必ず承諾と確認をとっておきましょう。

休暇(時に一時帰国)の確認、合意

自身の都合を最優先しがちな外国人の場合、有給休暇が何日あるかや、自身の事情での1カ月以上の一時帰国休暇を求めてくる場合があります。この点も、事前に合意形成をしておくべきです。

例)1年以上の良好な就労が認められた場合は、外国人の諸事情に配慮し、一年のうち、1カ月までの休暇を与える…など。

注:同一労働同一賃金などの観点からも、社労士の方とご相談の上、就業規則や賃金規定の改定など、法的に問題のない整備も必要です。

雇用契約の更新条件の確認、合意

特定技能の雇用契約の場合、特に在留資格の期間更新が1年おきということもあって、1年の有期雇用契約を締結するケースが多く見受けられます。(永年雇用締結でも問題はありません)

ただし、この際、どういう諸条件をクリアした場合のみ、契約の1年更新を認める…など、この先々の点についてもまた、事前に合意しておく必要があります。

注:個別具体的な目標数値設定をし、1年後に目標達成した場合には、いくらの昇給を約束するなど、インセンティブの条件を明示していくと、自社が望む人材として労働力を存分に発揮していく流れとなります。昇給がなく同じ賃金で雇用継続の延長を望む場合、特定技能外国人側にとっては、転籍、転職の選択肢が頭をよぎるようにもなりますので、計画的戦略的に更新条件を設定していくことは、定着化に向けての効果的な手段の一つとなっています。(結果、人材育成へと繋がっていきます)

住まい、通勤、各種支援内容の確認、合意

特定技能では法的に7.5㎡のスペースを確保し、個室が望ましいなど、具体的に諸条件が定められていますが、同時に、国によっては家賃として控除できる金額上限が定められている場合もあります。

また法的観点とは別に、「外国人も個々に考え方も違いがあり、一人の個室が良い…一人では心細いので数名での同室が良い…お金を稼ぎたいので家賃はできるだけ安い方が良い…」など、様々です。

あと時折あるのが、「就業先の近隣に適当な住まいがない…通勤にかなり時間も体力も要する…近くにスーパーなど買い物できるお店がない…雪国では冬場に送迎が必要…」などなど、配慮すべき点は少なくありません。

総合的に雇用側も外国人労働者側も許容できる範囲内におさめて、住まいを確定する必要があります。

注:電気ガス水道代について

使ったら使った分だけ、受益者負担として控除できるように、「実費」とするのが望ましいです。エアコンをつけっぱなしで出社する…、水道を出しっぱなしで締めない…など、自身が費やす痛みを伴わない限り、節約を教えるのは大変難しいとお考えください。

注:損害保険について

ある外国人が契約満了に手帰国後、退去したアパートの管理人から連絡があり、水道に油を流していたため、水道管を総入れ替えする工事が必要となった…原状復帰費用として負担して欲しい…と連絡がありました。

結果として受入企業が負担せざるを得ず、大変な損害を被ったこともあります。生活指導にて気づき、注意していればよかったのですが、見落とす場合もありますので、損害保険をかける企業もあります。

各種支援内容の確認、合意

特に元技能実習生からの移行の場合、技能実習時ほどに手厚い保護や監理指導などがない場合があります。

法的支援10項目以外、積極的に支援しない登録支援機関や、受入先もあることでしょう。

特定技能2号に向けて臨む場合は、そもそも支援なしでも独立独歩していける人材に成らねばいけません。

特定技能1号のうちは、法的強制力のある支援項目がありますが、これら以外の面では、自力で問題を解決していくような指導も必要になってきます。

この辺りの特定技能という在留資格の位置付けや線引きについても、事前に説明し、合意と納得を得ておきましょう。

「残業」の確認

絶対に説明をしてはならないことは、残業時間を含む手取総額を想像させてしまう発言です。「出稼ぎ」を目的とした人材は、自己都合の良い解釈をする傾向にありますので、繁忙期を強調した説明の場合、閑散期に相談をとは言えないトラブルに発展することがあります。

理想として残業時間は「0」です。残業が無くても従業員が満足のいく基本給、及び効率の良い職場環境を構築することです。残業はあくまでも「やむを得ない」場合に生じるものであること、説明するのであれば「閑散期」のみで説明をしておく方が賢明です。

※そもそも日本の労働法令としては、長時間労働による労災回避のため、残業発生自体も問題視し実地検査時の確認指摘事項になりやすくなります。

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