既に昨年からたびたび報道に取りざたされていますのでご存じかと思いますが、技能実習事業/特定技能事業は近々法改正が予定されていますので、従来の制度とは大きく様変わりする可能性があります。特に登録支援機関の位置づけや役割は恐らく厳格化されるであろうと予想されています。
また、登録支援機関には特定技能外国人が円滑に活動を行うことが出来るよう各種支援を行う役割がありますが、特定技能外国人との間で信頼関係が構築出来ていなければ、適切な支援を行うことが出来ません。誰しも異国で生活し、働き続けることは非常にストレスがかかります。登録支援機関にとっては数ある支援対象者の一人であったとしても、本人にとっては何かあった際に頼れる存在の有ると無いとでは精神的な負担が大きく異なります。登録支援機関として定期的な支援業務だけしておけば良いと考えるのではなく、支援対象者に寄り添い、時には厳しく、時には励まし、その子の人生に関わる支援を行っているのだという心構えや覚悟が必要です。
登録支援機関が儲かると思って事業に参入したものの採算が取れないから撤退します…と安易な気持ちで関わるものではありません。

続いてリスクについてですが、特定技能と技能実習の一番の違いと言えるのは“転職”の有無です。
技能実習は余程のことが無い限り技能実習1号2号の3年間は転職することはありません。一方の特定技能は(簡単ではないものの)転職は自由です。また、転職を促す業者やブローカーも数多くいます。雇用条件が良い特定技能所属機関に所属するのであればまだしも、地方で賃金がお世辞にも良くない特定技能所属機関に対して特定技能外国人を紹介・支援を行う場合、どれだけ親身になって支援していたとしても簡単に転職を決めてしまう子もたくさんいます。

単に人手で困っている会社が回りにたくさんあるからと特定技能に安易に参入するのではなく、冷静に市場調査とリスク分析を行いつつ、熱い使命感を持って彼・彼女たちの人生を支える覚悟を持って事業に取り組んでいただくようお願いいたします。


2019年に施行された特定技能制度ですが、早4年が過ぎ登録支援機関の数も7,800件(2023年1月末時点)を超えております。
開始当初は特定技能外国人の支援にかかる支援費や職業紹介における紹介料について相場もまちまちではありましたが、現在はおおよその相場も出来つつあります。
(出入国在留管理庁による“技能実習制度及び特定技能制度の現状について”の資料によると特定技能外国人1人当たりの支援委託料(月額)は、“20,000円超~25,000円以下”が全体の中でトップの26.2%、続いて“15,000円超~20,000円以下”が25.3%、“25,000円超~30,000円以下”が20.3%となっております)


特定技能事業を始めたいとお考えの方に

  登録支援機関の業務は特定技能外国人への支援。制度上義務付けられた支援項目は以下の通りです。

  • 事前ガイダンスの提供
  • 出入国する際の送迎
  • 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 日本の学習の機会の提供
  • 相談又は苦情への対応
  • 日本人との交流促進に係る支援
  • 外国人の責めに帰すべき事由によらない特定技能雇用契約を解除された際の転職支援
  • 定期的な面談の実施、行政機関への通報

  特定技能外国人を受入れる事業者への支援は付加価値的サービスと認識してください。

  登録支援機関の要件

  • 支援責任者及び1名以上の支援担当者(常勤が望ましい)を選任していること。(兼任も可能です)
    • 以下のいずれかに該当すること。
      • 登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ実績があること。
      • 登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に報酬を得る目的で、業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること。(こちらの要件は個人の方のみを対象としています。よって法人の方等は対象外となっています)
      • 選任された支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者(就労資格に限る。)の生活相談業務に従事した経験を有すること。
      • 上記のほか、登録支援機関になろうとする個人または団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること。
  • 外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること。
  • 1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていないこと。
  • 支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと。

  登録支援機関の登録申請をするための体制整備

  • 定款の「目的」に登録支援機関業務を行う旨の記載
  • 支援責任者、支援担当者(兼務可)を1人以上選任。
  • 通訳人の配置。(外部委託可)
    ※ 通訳人の対応言語が登録支援機関として支援を行う事が可能な国籍の外国人になります。

  監理団体の様に事業所要件はありませんが、定款の「目的」に登録支援機関の業務を行う旨の記載がないといけません。

 特定技能制度の特徴

  技能実習とは違い、普通の労働者としての扱いです。
  特定技能制度は外国人が退職したいと思えばいつでも退職できるものですし、転職も同業種なら自由にできます。

  

 人材資源と採用ルート

  • 特定技能制度における人材資源は以下になります。
  • 主に東南アジアになります。
  • 現在、特定技能に関して二か国間取決めを締結していている送出し国政府が窓口を開設している国は、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオスとなっています。

  採用ルートは以下の4ルートがあります。


現在、外国人の活用として国が推し進めているのが特定技能制度です。特定技能制度自体 はまだまだ歴史が浅いので問題点については広く認知されているとは言い難い状況です。日本人の派遣と違い、外国人の場合は仕事や生活全般について面倒を見る範囲が広く、外国人雇用の経験値が必要です。
 今後も日本の労働者人口は減少していくことは間違いがないので、外国人に労働力を頼らなければならないことを考えると、将来性がある事業とは言えるでしょう。
 ただし、派遣と違い一定額を企業から徴収するため、抱えている特定技能生の絶対数が事業の成否に関わりますので営業力も必要です。
片手間で始められる事業ではないことは間違いありません。

技能実習を行っている監理団体が登録支援機関を始める場合は、技能実習と特定技能の違いを理解しておけば問題はないかと思います。
技能実習から同じ会社で特定技能に移行する場合、ほとんど問題は起きません。登録支援機関のみ(技能実習を行わない)場合は下記の準備と心構え、リスク管理を行っておきましょう。
登録支援機関は支援の範囲を選ぶことができますが、すべてを支援する形でないと受入先を増やしていくことは難しいと思われます。登録支援機関は、監理団体より責任の範疇が小さいため、技能実習以上に企業側が責任を負う部分が多いのですが、技能実習の延長で考えている企業が多く、すべてを登録支援機関に丸投げの例も散見されます。
企業側の教育をきちんと行っていくことがトラブル回避のポイントです。
企業側には現在の日本の状況は、外国人からみて働くのに魅力的な国なのか?を認識して自らが外国人に選ばれる企業になるよう努力することが必要です。