概要

 欧米を中心に“ビジネスと人権”が広まり、日本国内においてもサプライチェーンにおける人権への取り組みなどが頻繁に報道でも取り上げられることが増えてきました。
 特に技能実習生においてはベトナム等を中心に来日前に多額の借金を送出機関に徴収され、なおかつ制度上、転職が基本は認められていないが故にアメリカから強制労働と指摘を受けています。
 このような国際的な流れを受けて、日本国内でも大手企業を中心に自社およびサプライチェーン全体の人権デューデリジェンスを行う事例や現地側の本人負担を0にする取り組みが始まっています。
 現時点では一部大手企業のみに限られますが、今後は下請け企業にも同様の取り組みが要請される可能性もありますし、今後控える技能実習法改正に盛り込まれる可能性もございます。
 コスト増となる取組みについてはなかなか踏み切ることが難しいことは承知の上ですが、既にアジア諸国の若い人材が日本ではなくオーストラリアや韓国・台湾への関心を高めつつあります。

 監理団体として、客観的に実習実施者の現状を確認した上で、技能実習生および特定技能外国人たちにとって、より働きやすい環境とするため当該実習実施者に何が足りないのかをアドバイス・指導する知識や能力が今後は求められることとなります。


多くの「ハラスメント」が存在しますが、外国人に行われるハラスメントとしては「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」の事例が発覚することがあります。

外国人だから分からない…

これは日本側関係者の勝手な解釈です。
入国前・入国後に指導を受けてこなかった日本語で叱責される。叱責された言葉を調べれば、自身がどのような内容で罵倒されていたのか分かります。言葉の真意が理解に至らなくても、叱責している表情を見れば感情的か否かは外国人材も勘付きます。

よって感情のままに立ち振る舞うのではなく、気持ちを冷静に保ち改善を諭すよう言葉を選ぶ必要があります。これは日本人と同様です。

また体に触れるような行為は、宗教的にも日本人以上に敏感に反応しておりますので注意が必要です。

現在はSNS機器のアプリケーションでもダウンロードできる「技能実習手帳」において、技能実習機構に対して気軽に母国語相談できる窓口もありますし、ホームページからも「公益通報」の窓口もあります。

監理団体・実習実施者の感情的な対応が、どのように報告をされ公表されるかの社会的リスクを常に感じながら、外国人材を「人」として扱うことは基本中の基本です。

実際の人権侵害

暴行、暴言、セクハラ、パスポート・通帳の取り上げ/保管、私生活の制限等々色々あります。

2022年12月23日には、人身取引に関する注意喚起のリーフレットが公開されています。

技能実習生に対するその行為は人身取引です

最も記憶に新しいところとしては、岡山県の株式会社シックスクリエイトとその監理団体である岡山産業技術協同組合の問題でしょう。

外国人技能実習機構【技能実習生に対する人権侵害行為について(注意喚起)】

発覚直後に外国人技能実習機構からも注意喚起が出され、その後の行政処分でも『技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行ったことから』という事由で認定の取消が行われています。

ここ数年の技能実習生は、以前にも増して、“知識”を持っています。又、SNSの発展に伴い、OTIT、各労働組合、駆け込み寺と呼ばれる各シェルターへのアクセスが非常に容易になっています。

*もちろん、監理団体・実習実施者に一切非がない技能実習生個人の勝手な解釈による大騒ぎということもままありますが、それであっても自社籍の技能実習生であり、騒ぎの解決、雇用継続の責任は引き続き負っています。

更に、叱られ慣れていない若者の中には、「大きな声で注意された」「少し小突かれた」という理由で労働組合や駆け込み寺に行ってしまう技能実習生もいます。

「作業上、危険があった為」という大前提がついたとしても、感情論剥き出しで被害者面をする技能実習生もいます。

半ば、腫れ物に触れるような扱いすらしなければならない場合もありますが、配属時、作業時に、技能実習生がわかる言語で繰り返し起こりうる事故等の危険性を説くようにしましょう。

特に、建設業を扱う監理団体は、実習実施者の代表はもちろんのこと、指導員から一社員に至るまで、技能実習生との接し方をくどいほど説明するようにしましょう。

実習実施者のよく言い訳として、「自分らの若い頃は…」というものがありますが、既に若くもなければ、そういう時代でもありません。

“危険だったからヘルメットの上からちょっと小突いただけだ!!”という反論は通用しません。

不本意ながら、言ったもの勝ちと言っても過言ではありません。

監理団体は、建設業に限らず、技能実習生という外国人を受け入れるにあたり、実習実施者で起こりうる人権侵害を事前に想定し、穴を埋めていくようにしましょう。


企業受入停止リスク:☆☆☆☆☆
訴訟リスク    :☆☆☆☆

日本人同様人権侵害やハラスメントに対しても留意する必要があります。
ハラスメントに対しては外国人であることを理由にする言動や待遇格差は現に慎みましょう。暴力はもってのほかで、スキンシップのつもりでも相手の捉え方次第ではハラスメントになる可能性もあります。

外国人の場合、人権侵害(ととられる)ことにも注意が必要です。日本人従業員と違い、仕事だけではなく生活一般に関わることになりますので、より
注意しなければいけないことは多いと思ってください。
在留カードやパスポート、通帳は本人が預かってくれと言ってきても会社で保管してはいけません。寮に各人の鍵付きロッカーを設置しなければなりませんのでそこに入れて置くよう指導しましょう。年金手帳も預かりはNGです。必要なものはコピーをもらい、原本は本人に返却しておきましょう

実習生の場合、寮でのことも人権侵害に当たる可能性があります。本人不在時に寮に立ち入るときには必ず本人の許可を取ってからにしましょう。できれば複数で行くことをお勧めします。
外出や外泊の禁止など行動制限も良くありません。監視カメラの設置も防犯目的以外は認められませんので注意しましょう。
寮での生活に関しては、人権侵害に当たらないよう規定を作成しておくとよいでしょう。
指導員にもルールを理解させ、お互いの共通認識の下に話をすると理解が早い場合と思われます。


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