トラブルが発生する原因は、「お金の流れ」に起因します。

(技能実習)実習実施者(受入企業) → 監理団体
(特定技能)特定技能所属機関(受入企業) → 登録支援機関

この流れが制度設計に必要な「距離感」を狂わせています。

お金を貰う側は、受入企業を「お客様」と扱う部分が発生してしまいます。

特に技能実習生ではこの関係性が、「監理」という適切な距離感を狂わせます。

実習実施者(受入企業)と監理団体の間にトラブルが発生した際、「監理」という立場から、技能実習法をはじめとする関係法令に基づき、粛々と淡々と対応をすれば良いだけです。

その結果、関係性が途切れても、「非営利目的」ですので、本来であれば損害も無く解決する問題です。

しかし「お客様」関係を断ち切れない場合、個別に落とし処を見つけるしかありません。

特定技能場合は、全ての責任が特定技能所属機関(受入企業)にあり、登録支援機関はあくまでも「支援」ですので、トラブルとなること自体が無駄。契約を破棄し、自社支援を行うか、別の登録支援機関と新たな契約を結ぶだけになります。


監理団体と実習実施者間でのトラブルはよくあることです。トラブルの程度はそれぞれで軽いものから重いものまで様々あります。

軽いものは実習実施者の制度の理解不足や監理団体の説明不足が主なものでしょう。重いものは起こった事象に対する補償を含めたトラブルになると思います。監理団体としては様々なトラブルからその対処方法を学び、同じトラブルが起こらないように対策を打っておくことが大事です。

下記に過去に経験したトラブルの一部を紹介しておきます。

1 失踪、帰国に関するトラブル

失踪、帰国に関しては配属からの期間が短いほどトラブルになりやすいといえます。実習実施者としては入国時に費用がかかっているので、その費用を補償しろ!となることが多いトラブルです。このトラブルを防ぐには事前の説明と折れない心です。実習生受入の際企業とかわす契約書にもはっきりと補償はしないことを記載しておきましょう。

2 入国・配属時期が遅れたことによるトラブル

入国の時期については面接時にある程度伝えているとは思いますが、様々な事情で入国が遅れることがあります。その場合に寮の賃貸費の補償だったり、実習生がいる前提で確保していた仕事が出来なくなったことに関する補償などを要求する実習実施機関がいます。これも事前の説明と契約書への記載を行っておきましょう。

3 実習生に関するトラブル

実習生の仕事に満足できない、物品を破損させた、車にぶつけた等でもうこの実習生はいらない。解雇したい等を監理団体の指導不足として指摘してくるトラブル。実習生と企業は直接の雇用契約を結んでいるので日本人と同じく簡単に解雇はできないことを説明しましょう。

面接合格~入国までの間の企業側都合によるキャンセルの補償についてもよくトラブルになります。一般的には採用決定からキャンセルまでの期間の補償を行いますが、支払いを拒否する実習実施者もいます。これも契約書に明記しましょう

日誌や試験、事業報告等制度上やらなければならない処理が面倒くさいのでやめたい。実習制度を理解しておらず、外国人を雇用する資格はありません。この手の企業では必ずトラブルが起こりますので、早めにさよならしたほうがいいかもしれません。

6 転職転籍トラブル

実習生の失踪帰国と同じく、特定技能生の転職もトラブルの一因です。転職リスクに対する説明は十分すぎるほど行っていても、特に入職後短い期間で転職となると分かっていても文句を言いたい。働いた期間にもよりますが企業側の言い分です。(それは理解できます)これも最初からリスクとして企業側も認識しておく必要がありますので十分に説明しておくことが必要です。

7 費用を安くしてほしい

他の監理団体からの営業などにより監理費の値下げ要求トラブルもあります。監理費はかかる費用として算出しているので基本的には値下げは難しいはずです。無理なものは無理と断りましょう。

ほとんどのトラブルは説明をきちんとすることと企業側の制度の正しい理解によって解決できます。ここは書面で確認しておくくらいの慎重さは必要です。話し合いで解決しない場合は裁判まですすむこともあります。

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