①実習制度とはなんぞや

まず、第一に一般的な外国人の若者が「技能実習制度とはなんぞや」を理解していることはまずありません。海外への就労を目指している若者であっても同様です。
送り出し各国では、「労働力輸出政策」として扱われており、技能実習制度が掲げる「国際貢献」や「技術移転」を知っている者は皆無であり、それは送り出し機関職員であっても大佐がありません。その為、技能実習制度の仕組みについて、細かな理解をさせる必要性があります。特に、技能実習生に直結する問題としては、2号、3号への移行試験です。「技能実習生=3年」であるという認識が多く、2号移行試験に不合格だった場合、帰国しなければならないことは意外と知られていません。
そして、仕事さえできれば、お金さえ稼げれば、日本語は上手にならなくても問題ない、必要ないという考え方をしているものは少なくなりません。更に、仮に試験の存在を知っていたとしても、移行試験は送り出し国において、「落ちるはずのない簡単な試験」という認識をされていることもあります。
特に、新型コロナウイルスによる水際対策の緩和以降の入国組は、国を問わず、長期間に渡って稼げていなかった分、待機期間中に嵩んでしまった負債分を取り戻すべく特に仕事仕事仕事、お金お金お金に偏りがちです。
よって、「試験の為」というだけではなく、更にその先の特定技能への移行時、帰国時の就職活動時等に自身を高く売り込む為の道具としての日本語能力を得るという目的を掲げておくことは大切です。

②勉強の習慣付け【日本語教育(+α)】

次に、勉強の習慣を付けることが必要になります。
 18歳の技能実習生であれば、高校卒業から間もないので、日々高校に通い、勉強していた時期が非常に近いですが、25歳、30歳、35歳と歳を重ねていくにつれて、椅子に座って、机に向かって勉強が遠い過去のものへとなっていきます。
先に述べた通り、入国1年未満で移行試験が待ち構えている以上、実技とは別に、専門用語や試験勉強が必ず必要になってきます。そのときに、入国前から出国日をただ惰性で椅子に座っていた技能実習生と、試験合格の必要性、勉強継続の必要性を説かれてきた技能実習生とでは大きな差が生まれます。

③日本語

上記の通り、「仕事さえできれば、お金さえ稼げれば、日本語は上手にならなくても問題ない」と考えている技能実習生は一定数存在している為、日本語ができないことによるデメリットを理解させる必要があります。

よくあるデメリット

①移行試験不合格の危険性(1年で帰国)
②残業を含む仕事量への影響
③転職・帰国後の収入への影響

①移行試験不合格の危険性(1年で帰国)

技能実習生にとって、直接的な影響があることに加え、監理団体・実習実施者にとっても小さくない影響がありえます。最低3年を見込んで日本へ来ている技能実習生にとって、万一1年で帰国となった場合、失踪する危険性が高くなります。失踪者が出たという事実に加え、3年を見込んで雇用している日本側への影響も大きいはずです。

②残業を含む仕事量への影響

「稼ぐ」ことを主たる目的として日本へ来ている以上、多くの残業を望む技能実習生は少なくありません。但し、実習実施者にとって、残業代はコスト増にもなりえる為、日本語が拙く、仕事の覚えもよくない技能実習生とコミュニケーションが取れ、仕事もできる技能実習生とでは残業代に差が生まれることは必然です。

③転職・帰国後の収入への影響

3号移行時に転籍、実習修了時に特定技能で転職する際に日本語能力の高低で得られる給料に大なり小なり差が生まれること、帰国時に現地で得られる収入に大きな差が生まれることを理解させる必要があります。入国前から換算すると、いずれも最低で3年後の為、技能実習生にとっては、遠い将来の話となる為、「将来の為に勉強しましょう」という抽象的な話では全く響きません。具体的な数値をもって、説明・理解させる必要があります。

“継続性”が重要となります。

送り出し機関がこうした説明をしたとしても、響く者と響かない者は必ず発生しますが、継続性が重要でしょう。入国前の約半年で送り出し機関ができることには時間的な限界があります。送り出し機関・監理団体・実習実施者が継続的に技能実習生に対して説いていくことが非常に重要です。

技能実習生に限らず、易きに流れていきます。入国後に先輩技能実習生が全く勉強していなければ、後輩はそれに倣うでしょう。送り出し機関に口酸っぱく言われていても、監理団体・実習実施者から言われなければ、続かないでしょう。送り出し機関・監理団体・実習実施者が同じ方向を向いて、取り組んでいく必要があります。


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